不動産担保に関する業務に携わるビジネスパーソンにとって、根抵当権（ねていとうけん）は重要な知識です。
しかし、その仕組みや抵当権との違い、活用方法などは、専門用語も多く、理解しづらい部分も多いのではないでしょうか。
今回は、根抵当権の基礎からメリット・デメリット、抹消方法までを、専門用語を避け、簡潔に解説します。
目次
根抵当権とは何か理解を深める
根抵当権の基本的な定義
根抵当権とは、不動産を担保として、一定の金額（極度額）の範囲内で、繰り返し融資を受けたり返済したりできる権利です。
通常の抵当権が特定の債権を担保するのに対し、根抵当権は、極度額内であれば、将来発生する不特定の債権をまとめて担保します。
借入金の返済後も、極度額の範囲内で再度融資を受けることが可能です。
これは、企業が事業資金を融資を受ける際などに、何度も抵当権を設定する手間を省くために活用されます。
抵当権との違いを明確にする
通常の抵当権は、特定の借入金（例えば住宅ローン）を担保する権利です。
借入金を完済すれば抵当権は消滅します。
一方、根抵当権は、極度額を設定し、その範囲内で複数の借入金を担保します。
完済しても根抵当権自体は消滅せず、再度借入が可能となります。
抵当権は一度の融資に対して設定されますが、根抵当権は継続的な取引関係における複数の債権を担保する点が大きな違いです。
また、抵当権では連帯債務者を立てることが可能ですが、根抵当権では基本的に不可能です。
根抵当権のメリット
根抵当権の最大のメリットは、設定費用を節約できる点です。
何度も融資を受ける場合、通常の抵当権では毎回設定手続きが必要となり、費用もかかりますが、根抵当権は一度の設定で済みます。
また、融資を受けるたびに手続きを行う必要がないため、時間的なコストも削減できます。
さらに、極度額の範囲内であれば、繰り返し融資を受けることが出来るため、資金繰りにも柔軟性を持たせることができます。
根抵当権のデメリット
根抵当権は便利な一方で、デメリットもあります。
融資先の変更や他の金融機関からの融資が困難になる可能性があります。
根抵当権を設定している不動産は、他の金融機関にとって担保価値が低いと判断されるケースが多く、新たな融資を受けにくい場合があります。
また、極度額が大きいため、債務不履行になった場合、債権者（金融機関）が優先的に弁済を受ける範囲が大きくなるというリスクも伴います。
根抵当権の活用と抹消手続き
根抵当権の設定と活用シーン
根抵当権は、主に企業が事業資金の融資を受ける際に活用されます。
事業運営に必要な資金を必要な時に柔軟に調達できるため、経営の安定化に役立ちます。
個人においては、リバースモーゲージや、工事の進捗に合わせて支払われる注文住宅の建築費用など、複数の借入が必要な場合に利用されることがあります。
根抵当権の抹消方法
根抵当権を抹消するには、まず金融機関に完済を申し出て、抹消に必要な書類を受け取る必要があります。
その後、法務局に抹消登記を申請します。
手続きには、必要な書類の提出と費用（登録免許税など）が必要です。
完済が困難な場合は、金融機関と交渉の上、任意売却を選択する可能性もあります。
相続の場合も、手続きが必要になります。
抹消手続きに必要な書類と費用
抹消手続きに必要な書類は、金融機関によって異なりますが、一般的には完済証明書や登記識別情報などが含まれます。
費用は、登録免許税や司法書士への報酬などです。
具体的な費用は、借入額や不動産の所在地などによって変動します。
まとめ
今回は、根抵当権の定義、抵当権との違い、メリット・デメリット、そして抹消方法について解説しました。
根抵当権は、継続的な取引を前提とした、柔軟な資金調達手段ですが、融資先の変更や新たな融資の取得が難しくなる可能性もあることを理解しておく必要があります。
活用を検討する際には、メリットとデメリットを十分に比較検討し、自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。
抹消手続きも複雑なため、不明な点があれば専門家に相談することをおすすめします。
根抵当権は、専門的な知識が必要なため、利用にあたっては、金融機関や専門家と十分に相談することが重要です。